地域と技術の絆 - OSS活用事例集

多様な意見をまとめる!OSS Loomioで地域活動の意思決定プロセス改善

Tags: Loomio, 意思決定, 合意形成, 意見集約, 地域活動, NPO, オンラインコミュニケーション

はじめに

地域活動やNPOの運営において、関係者間の意見をまとめ、円滑に意思決定を進めることは活動の継続と発展に不可欠です。しかし、多様なバックグラウンドを持つ参加者全員が同じ時間・場所に集まることは難しく、意見交換や合意形成に多くの時間と労力を要することが少なくありません。特に近年、オンラインでのやり取りが増える中で、対面のような「場の空気」に頼らない、体系的な議論や意思決定のプロセスが求められています。

この記事では、オープンソースの意思決定支援ツールである「Loomio」を活用し、地域活動における多様な意見の集約と合意形成を効率化した事例をご紹介します。Loomioがどのように地域での課題解決に貢献するのか、具体的な活用方法や導入のポイントについて詳しく見ていきます。

背景・課題

ある地域の活性化を目指すNPO法人では、様々なプロジェクトが並行して進行しており、各プロジェクトチームや理事会など、複数のグループで頻繁な意思決定が必要でした。活動メンバーは本業を持ちながら参加している人が多く、定期的な対面会議への参加が難しい状況でした。

以前は、主にメールやSNSグループでのやり取り、そして月に一度の全体会議で重要な事項を決定していましたが、以下のような課題に直面していました。

これらの課題を解決し、より多くのメンバーが活動に参加しやすくなるような、効率的かつ透明性の高い意思決定プロセスを確立する必要がありました。

導入したOSS/技術:Loomio

この課題に対し、NPOはオープンソースの意思決定支援プラットフォーム「Loomio」の導入を検討しました。Loomioは、ニュージーランドで開発されたOSSであり、グループでの議論、提案、そして合意形成に至るまでのプロセスを構造化し、オンライン上で行うことを目的としたツールです。

Loomioを選定した主な理由は以下の通りです。

クラウドサービスとして提供されているSaaS版と、自前のサーバーにインストールして利用する自己ホスト型がありますが、今回はまずはSaaS版の無料プランから試用を開始しました。これにより、専門的なサーバー知識がなくてもすぐに利用を開始できました。

具体的な活用方法

NPOでは、Loomioを以下のように活用し始めました。

  1. グループの作成: プロジェクトチームや委員会ごと、あるいは議題ごとにLoomio内にグループを作成しました。これにより、関連するメンバーだけが必要な情報にアクセスできるようになりました。
  2. 「スレッド」での情報共有と議論: 特定の議題や情報共有のために「スレッド」を作成しました。例えば、「〇〇イベント企画会議の議事録共有」「新しい助成金に関する情報」といったスレッドを立て、関連情報を集約しました。
  3. 「提案」機能による意思決定: 重要な決定が必要な議題については、「提案」を作成しました。提案には、背景説明、提案内容、期待される結果などを記述します。
    • 議論: 提案に対して、メンバーはコメントを通じて質問したり、意見を表明したりします。Loomioのインターフェースは、議論の流れを追跡しやすく設計されています。
    • 意思表示/投票: 議論が深まったら、提案に対する意思表示や投票を行います。Loomioのデフォルトの意思表示は「賛成」「反対」「保留」「ブロック」などがあり、単純な多数決ではない、多様な意見を考慮した合意形成を促します。例えば、「ブロック」は提案を阻止する強い反対意見であり、これが出た場合は提案を再検討する必要があります。カスタマイズ可能な投票機能も利用できます。
    • 決定: 設定した期間内に、参加者の意思表示が集まり、合意形成の閾値(例: 全員の賛成、または反対やブロックがない状態など)に達した場合、提案が「決定」として成立します。
  4. 会議の事前準備・補完: 定例会議の前に、Loomio上で議題に関する情報共有や予備的な議論、簡易な意思確認(例: 候補の中からいくつかを選ぶための投票)を行いました。これにより、会議当日は深掘りしたい部分や最終確認に時間を充てることができ、会議時間を大幅に短縮できました。
  5. イベント参加可否や役割分担の確認: イベント実施にあたり、メンバーの参加可否や、各役割への立候補などをLoomioの投票機能やコメント機能を活用して行いました。

導入効果・メリット

Loomioの導入により、このNPOでは以下のような効果が見られました。

導入のポイント・注意点

Loomioを地域活動で活用する上でのポイントや注意点として、以下の点が挙げられます。

まとめ・展望

地域活動における多様な意見の集約と円滑な意思決定は、活動の質を高め、参加者の満足度を向上させる上で非常に重要です。オープンソースの意思決定支援ツールであるLoomioは、時間や場所の制約を超えて、構造化された議論と透明性の高い合意形成を可能にします。

この事例のように、Loomioを活用することで、これまで意見が埋もれがちだったメンバーの声を引き出し、活動への参加意欲を高めることができます。また、会議時間の短縮や情報共有の効率化といった運営面のメリットも大きいと言えます。

LoomioのようなOSSを活用することは、コストを抑えつつ、団体の運営スタイルに合わせた柔軟なツール導入を可能にします。今後、地域活動において、Loomioがさらに多くの意見をつなぎ、より良い合意形成を生み出すための一助となることが期待されます。技術を味方につけ、地域を活性化する活動をさらに力強く進めていきましょう。