地域と技術の絆 - OSS活用事例集

地域資源を見える化!OSS Baserowで情報管理を効率化

Tags: Baserow, 情報管理, ノーコード, 地域活性化, OSS, データベース

はじめに

地域社会の活性化や課題解決に取り組むNPOや市民活動団体にとって、様々な情報の管理は日々の活動の基盤となります。例えば、イベント参加者の名簿、地域の空き家情報、ボランティア登録者リスト、助成金の情報、プロジェクトの進捗状況など、多岐にわたる情報が存在します。これらの情報が、紙や個々の担当者のパソコンにあるスプレッドシートで管理されている場合、最新情報の共有が難しかったり、必要な情報を探すのに時間がかかったりといった課題に直面することが少なくありません。

本記事では、このような地域活動における情報管理の課題に対し、オープンソースのノーコードデータベースツールであるBaserowを活用して効率化を実現した事例をご紹介します。Baserowがどのように地域の情報を見える化し、共有を円滑にするのか、その具体的な活用方法と導入のポイントを探ります。

背景・課題:情報が分散し、活用しきれない現状

ある地域づくり団体では、複数のプロジェクトが同時進行しており、それぞれのプロジェクトで参加者リストや活動記録、関連する地域資源の情報などを管理していました。しかし、各担当者が個別のスプレッドシートファイルやノートで情報を管理していたため、全体としてどのような情報があるのか把握が難しく、他のプロジェクトで役立つ情報があっても共有されにくい状況でした。

また、新しいイベントを企画する際に過去のイベント参加者リストを探すのに時間がかかったり、特定の条件(例: 高齢者向けのイベントに関心がある人)に該当するボランティアをリストアップするのが手作業になり負担が大きいといった問題も発生していました。情報が「存在するだけ」で、有効に「活用」できていないという課題意識が高まっていました。

導入したOSS/技術:Baserow

この団体が課題解決のために選んだのが、オープンソースのノーコードデータベースツール「Baserow」でした。

Baserowは、スプレッドシートのような直感的なインターフェースを持ちながら、リレーショナルデータベースのような高度なデータ管理機能を備えています。「ノーコード」であるため、データベースに関する専門的な知識がなくても、ウェブブラウザ上で簡単にデータベースを構築・管理できます。

Baserowを選定した理由はいくつかあります。まず、オープンソースであるため、ライセンス費用がかからず、予算が限られる地域団体にとって導入しやすい点です。次に、ユーザーインターフェースがスプレッドシートに似ており、特別な研修を受けなくても既存のスキルを活かして利用できる見込みがあったこと。そして、テキスト、数値、日付、単一選択、複数選択、添付ファイル、さらには他のテーブル(シート)へのリンクといった多様なデータ型を扱える柔軟性があったことです。これにより、これまでは別々の形式で管理していた多様な情報を一元的に管理できると考えました。

具体的な活用方法:地域情報の「見える化」と共有

団体では、まずいくつかの情報管理をBaserowに移行することから始めました。

  1. イベント管理データベース:

    • 過去および今後のイベント情報を「イベント名」「開催日」「場所」「参加者数」「担当者」「関連資料(添付ファイル)」「イベント報告(リッチテキスト)」といったカラム(列)で管理するテーブルを作成しました。
    • 参加者リストは別の「参加者」テーブルで管理し、イベントテーブルからリンクできるように設定することで、「どのイベントに誰が参加したか」を容易に追跡できるようにしました。
  2. 会員・ボランティア名簿:

    • 「氏名」「連絡先」「居住地域」「関心分野(複数選択)」「登録日」「特記事項」などの情報を持つテーブルを作成しました。
    • 関心分野を複数選択形式にしたことで、「環境保全」「高齢者支援」「イベント運営」など、個々のボランティアがどのような活動に関心があるかを構造的に管理できるようになり、イベントやプロジェクトに応じて適切なボランティアをリストアップする作業が格段に効率化されました。
  3. 地域資源リスト:

    • 地域の特産品、文化財、空きスペース、専門スキルを持つ住民などの情報を「名称」「種類(単一選択)」「所在地/連絡先」「説明」「写真(添付ファイル)」といった形でテーブル化しました。
    • これにより、「イベント会場として使える空きスペースはどこか?」「地元の特産品を使った新しい企画ができないか?」といった問いに対し、一元化されたデータベースから迅速に情報を検索できるようになりました。

これらのテーブルは、プロジェクトごとや担当者ごとに表示内容を絞り込んだり、特定の条件で並べ替えたりできる「ビュー」を作成することで、各自が必要な情報にすぐにアクセスできるように設定しました。また、メンバー間でデータベースへのアクセス権限を設定し、情報の共有と同時にセキュリティにも配慮しました。

導入効果・メリット:情報活用の促進と効率向上

Baserowの導入により、この地域団体では顕著な効果が見られました。

まず、情報の一元化が進み、どこにどのような情報があるかが明確になりました。これにより、「あの情報どこだっけ?」と探す時間が大幅に削減されました。

次に、情報共有が格段に円滑になりました。Baserow上の情報は常に最新であり、メンバー全員が同じ情報ソースを参照できるため、情報の齟齬が減り、コミュニケーションロスが減少しました。

また、データの検索性・活用性が向上しました。例えば、特定の地域に住む会員だけを抽出したり、ある関心分野を持つボランティアリストを瞬時に作成したりすることが可能になり、イベント準備やプロジェクト遂行の効率が大きく向上しました。これにより、これまで情報整理に費やしていた時間を、より本質的な地域活動に充てることができるようになりました。

さらに、オープンソースであるBaserowを利用することで、高機能なデータベースツールを低コストで導入・運用できています。

導入のポイント・注意点

Baserowの導入にあたっては、いくつかのポイントがあります。

まとめ・展望

地域活動における情報管理の課題は、活動の効率だけでなく、情報活用による新たな展開の可能性をも左右します。本記事でご紹介したBaserowのようなオープンソースのノーコードデータベースツールは、専門知識や大きな予算がなくても、情報の「見える化」と効率的な管理を実現するための強力な味方となります。

情報が整理され、活用しやすくなることで、地域のニーズに合わせたきめ細やかなサービス提供や、地域資源を活かしたユニークなプロジェクト企画がより容易になります。Baserow以外にも様々なオープンソースの情報管理ツールが存在します。自団体の課題や目的に合ったツールを見つけ、情報を力に変える取り組みを進めていくことで、地域社会の活性化に大きく貢献できるのではないでしょうか。