地域活動の広報・記録に役立つ!OSS OpenShotで手軽に動画編集
はじめに
地域での活動やイベントをより多くの人に知ってもらうため、また、参加者や関係者と感動や成果を共有するために、「動画」の活用が注目されています。しかし、「動画編集は難しそう」「高価なソフトが必要なのでは?」と感じ、手が出しにくいと考えている方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、そうした課題を解決し、地域活動の情報発信や記録に役立つオープンソースの動画編集ソフト「OpenShot」をご紹介します。専門的な知識がなくても、基本的な操作で魅力的な動画を作成できるようになる方法をお伝えします。
背景・課題
地域のお祭り、ボランティア活動、勉強会など、日々の活動や特別なイベントは、その場の雰囲気や人々の表情が伝わる動画にすると、情報伝達力が格段に向上します。ウェブサイトやSNSでの発信はもちろん、活動報告会や説明会での上映も効果的です。
しかし、多くの場合、地域活動に携わる方々は専門の広報担当者ではなく、ITスキルや利用できる予算にも限りがあります。プロ向けの動画編集ソフトは高機能である一方、操作が複雑で高価なものがほとんどです。スマートフォンの標準機能だけでも簡単な編集は可能ですが、「複数の動画を繋げたい」「テロップを入れたい」「音楽を付けたい」といった、少し踏み込んだ編集をしたいと思ったときに壁にぶつかることがあります。
導入したOSS/技術:OpenShot
そこで活用を検討したいのが、オープンソースの動画編集ソフト「OpenShot」です。
OpenShotは、完全に無料で利用できるオープンソースソフトウェアです。Windows、macOS、Linuxといった様々なOSに対応しており、多くのコンピューターで利用できます。
このソフトを選んだ理由はいくつかあります。まず第一に、費用がかからないことです。予算が限られる地域活動においては、これは非常に大きなメリットです。次に、操作画面が比較的シンプルで、初心者でも直感的に扱いやすいように設計されている点です。もちろん、動画編集にはある程度の慣れが必要ですが、基本的なカット、結合、テロップ追加といった作業であれば、比較的短時間で習得できます。
OpenShotは、専門的な編集機能も備えつつ、地域活動で必要とされるであろう基本的な編集作業を効率的に行うのに適したバランスの取れたツールと言えます。
具体的な活用方法
OpenShotを使って地域活動の動画を作成する基本的なステップと、いくつかの活用アイデアをご紹介します。
基本的な動画編集の流れは以下のようになります。
- 動画・写真素材の取り込み:
- スマートフォンやカメラで撮影した動画ファイルや写真ファイルをOpenShotに取り込みます。画面左側の「プロジェクトファイル」エリアにファイルをドラッグ&ドロップするだけです。
- タイムラインへの配置:
- 取り込んだ素材を、画面下部の「タイムライン」と呼ばれる場所にドラッグ&ドロップして配置します。タイムラインは、動画の設計図のようなもので、ここに素材を並べていくことで動画の尺や構成が決まります。複数の動画クリップを時系列に並べたり、動画の上にテロップやBGMを重ねたりすることができます。
- 不要部分のカット・トリミング:
- タイムライン上で動画クリップを選択し、ハサミのマークのツールを使って不要な部分をカットしたり、クリップの端をドラッグして長さを調整(トリミング)したりします。
- クリップの結合・並べ替え:
- 複数のクリップをタイムライン上で並べることで、簡単に結合できます。ドラッグ&ドロップで順番を自由に入れ替えられます。
- 字幕(テキスト)の追加:
- メニューから「タイトル」を選び、「タイトルの編集」または「アニメーションタイトルの編集」を選択します。動画のタイトル、場所、日時、説明などを入れたい場合に利用します。テンプレートを選んでテキストを編集し、作成したタイトル画像をタイムラインの動画クリップより上のトラックに配置します。
- BGMや効果音の追加:
- 動画ファイルと同様に、BGM用の音声ファイル(MP3など)をプロジェクトファイルに取り込み、タイムラインの空いているトラック(通常は動画トラックより下)に配置します。音量の調整も可能です。著作権フリーの音楽素材サイトなどを活用しましょう。
- 簡単なトランジション(切り替え効果)の追加:
- 動画クリップと動画クリップの間に、フェードイン・フェードアウトなどの切り替え効果を入れることで、滑らかな画面遷移になります。OpenShotには様々なトランジション効果が用意されており、タイムラインのクリップ間にドラッグ&ドロップするだけで適用できます。
- エクスポート(動画ファイルの書き出し):
- 編集が終わったら、メニューの「ファイル」から「ビデオのエクスポート」を選びます。YouTube、SNS、一般的な再生ソフトなど、目的に合わせた形式(MP4など)や画質を選択して、動画ファイルとして書き出します。
これらの基本的な機能を組み合わせるだけで、以下のような動画を作成できます。
- 地域イベントの報告動画: 撮影したイベントの様子を時系列に並べ、開催日時や内容を示すテロップ、楽しそうな雰囲気を伝えるBGMを加える。
- 活動紹介動画: 普段の活動風景の動画や写真をつなぎ合わせ、「私たちの活動」「参加方法」といったテロップ、活動理念などを伝えるナレーション(別途録音した音声ファイルを使用)を加える。
- 特定の場所や地域の魅力紹介: 地域の風景や名所、イベントなどの映像に、場所の名前や簡単な説明のテロップ、地域の雰囲気に合ったBGMを加える。
導入効果・メリット
OpenShotを地域活動に導入することで、以下のような効果やメリットが期待できます。
- 情報発信力の向上: 動画という形式で活動内容を伝えることで、文字や写真だけでは伝わりにくい臨場感や熱意を届けられます。これにより、共感を得やすくなり、新たな参加者や支援者の獲得に繋がる可能性があります。
- 活動記録の充実: イベントや活動の様子を動画で記録することで、より鮮明な形でアーカイブを残せます。これは後々の振り返りや、次回の企画にも役立ちます。
- コストの大幅削減: 高価なプロ向けソフトを購入する必要がなく、無料で利用できるため、費用面の負担がありません。
- 専門知識が不要: 直感的な操作画面と基本的な機能で、動画編集未経験の方でも取り組みやすい設計です。特別な技術研修を受けなくても、少し操作を練習するだけで実用的な動画を作成できます。
- 多様な共有方法: 作成した動画ファイルは、YouTube、Facebook、X(旧Twitter)、InstagramなどのSNS、団体のウェブサイト、メールなど、様々な方法で共有できます。
導入のポイント・注意点
OpenShotを導入し、活用していく上でのポイントや注意点です。
- 公式サイトからのダウンロード: OpenShotは公式サイト(openshot.org)からダウンロードできます。安全のため、必ず公式サイトから入手するようにしてください。
- チュートリアルを活用: 公式サイトには動画のチュートリアルや操作ガイドが用意されています。また、YouTubeなどでも多くの解説動画が見られます。まずは基本的な操作方法を学ぶことから始めましょう。
- PCのスペック確認: 動画編集は、ある程度PCの処理能力を使います。特に高画質の動画を扱う場合や、複雑な編集をする場合は、古いPCでは動作が重くなることがあります。可能であれば、ある程度のスペック(特にCPU、メモリ、ストレージの空き容量)があるPCでの利用をお勧めします。
- こまめな保存: 編集作業中は、予期せぬエラーなどに備え、プロジェクトファイルをこまめに保存する習慣をつけましょう。
- 著作権への配慮: 動画に使用するBGMや画像、映像素材には著作権があります。利用規約を確認し、著作権フリーの素材を利用するなど、適切な方法で使用することが重要です。地域活動の広報であれば、ご自身で撮影された映像や写真、フリー素材サイトの利用が基本となります。
- 困ったときはコミュニティを活用: OpenShotは世界中で利用されているOSSです。操作方法で分からないことがあれば、OpenShotの公式フォーラムや、関連するオンラインコミュニティ、技術系Q&Aサイトなどで情報を検索したり質問したりすることで、解決策が見つかることがあります。
まずは、数分程度の短い動画から作成を始めてみましょう。例えば、次回のイベント告知動画や、直近の活動報告動画など、具体的な目的を持って取り組むと、より効果的にスキルを習得できます。
まとめ・展望
OpenShotのようなオープンソースの動画編集ソフトを活用することで、「動画編集は難しい」「費用がかかる」といったイメージを払拭し、地域活動における情報発信や記録の可能性を大きく広げることができます。専門的な技術や高額な投資がなくても、魅力的な動画を作成し、より多くの人々に活動を知ってもらい、共感を呼ぶことが可能になります。
イベントのハイライトをまとめた動画、インタビュー形式での活動紹介、地域住民へのメッセージ動画など、アイデア次第で様々な動画を作成し、活用することができます。
地域におけるオープンソース技術の活用は、このように特定の課題解決にとどまらず、活動そのものを活性化し、新たな可能性を切り拓く力を持っています。OpenShotを活用した動画編集が、皆様の地域活動の一助となれば幸いです。