地域と技術の絆 - OSS活用事例集

地域イベント運営が変わる！Nextcloudで告知から参加者管理まで一元化

はじめに

地域のお祭り、セミナー、ワークショップなど、様々なイベントは地域住民の交流や活性化に欠かせないものです。しかし、イベントの企画から告知、参加者の募集・管理、そして当日の運営に至るまで、担当者の負担は決して小さくありません。特に、参加申し込みの受付や参加者リストの作成・更新、関係者間の情報共有などは、手作業で行うと多くの時間と労力を要することがあります。

この記事では、オープンソースソフトウェア（OSS）であるNextcloudを導入・活用することで、これらの地域イベント運営における課題をどのように解決し、効率化できるのか、具体的な事例を通じてご紹介します。既にNextcloudを情報共有基盤として利用されている方にも、さらに活用範囲を広げるヒントとなれば幸いです。

背景・課題

ある地域団体では、定期的に開催するイベントの運営において、以下のような課題に直面していました。

• 告知と募集の非効率性: イベントの告知はチラシやウェブサイトへの掲載が主で、参加申し込みは電話やメール、手書きの申込用紙で行っており、集計に手間がかかっていました。
• 参加者情報の管理の煩雑さ: 申し込み方法が複数にわたるため、参加者リストをまとめる作業に時間がかかり、情報の入力ミスや更新漏れが発生しやすい状況でした。Excelファイルで管理していましたが、ファイルが複数存在したり、最新版がどれか分からなくなったりすることも少なくありませんでした。
• 関係者間の情報共有不足: イベント運営に関わるメンバー間で、参加者リストや準備状況などの情報がリアルタイムに共有されず、連携がスムーズにいかないことがありました。
• 問い合わせ対応の負担: 参加申し込み状況やイベント詳細に関する問い合わせが多く、担当者が対応に追われていました。

これらの課題により、イベント運営の非効率化だけでなく、担当者の疲弊や、本来注力すべきイベント内容の企画や改善に時間を割けないという問題が生じていました。

導入したOSS/技術：Nextcloudとその関連アプリ

この地域団体が課題解決のために導入・活用したのは、OSSのNextcloudとその追加アプリです。Nextcloudは、オンラインストレージやファイル共有機能を中心に持ちながら、カレンダー、タスク管理、フォーム作成、データベース機能など、様々な機能を追加できる拡張性の高いプラットフォームです。

Nextcloudを選んだ主な理由は以下の通りです。

• 機能の統合性: ファイル共有だけでなく、イベント管理に必要な複数の機能を（Forms, Tables, Calendarなど）を一つのプラットフォーム上で利用できる点。
• 既存の情報共有基盤との連携: 既にNextcloudを団体内の情報共有に利用していたため、新たなツールを導入するよりもスムーズに進められると判断した点。
• オープンソースであること: 特定のベンダーに依存せず、長期的に安心して利用できる点。導入・運用コストを抑えられる点（自前でサーバーを構築・運用する場合や、ホスティングサービスを利用する場合など、いくつかの方法があります）。

特に、イベント管理において中心的に活用したのは以下のNextcloudアプリです。

• Formsアプリ: 参加申し込みフォームの作成・公開
• Tablesアプリ: 参加者情報のデータベース管理
• Calendarアプリ: イベント日程の共有と管理
• （任意）Deckアプリ: イベント準備タスクの管理

具体的な活用方法

この団体では、Nextcloudの各アプリを連携させて、イベント運営の効率化を図りました。

1. Formsアプリで参加申し込みフォームを作成・公開:

   • Formsアプリを利用し、イベント名、氏名、連絡先、参加人数、アレルギー情報など、申し込みに必要な項目を設定したWebフォームを作成しました。
   • 項目はドラッグ＆ドロップで簡単に追加でき、必須項目や入力形式の指定も可能です。
   • 作成したフォームのURLを、団体のウェブサイト、SNS、メールなどで告知しました。これにより、参加希望者はオンラインで手軽に申し込めるようになりました。

2. Tablesアプリで参加者情報を一元管理:

   • Formsアプリで受け付けた申し込みデータは、自動的にNextcloudのTablesアプリに連携されるように設定しました。
   • Tablesは表形式でデータを管理できるデータベース機能を持つアプリです。参加者一人ひとりの情報が一覧で表示され、申し込み日時や支払い状況などの管理項目を自由に追加できます。
   • 特定の条件（例: 支払い済みの参加者、特定のプログラムへの参加者）でデータをフィルタリングしたり、氏名順などでソートしたりすることが容易になり、参加者リストの作成・更新作業が大幅に効率化されました。

3. Calendarアプリでイベント日程を共有:

   • イベントの日程、時間、場所などの詳細情報をCalendarアプリに登録し、運営メンバーや関係者と共有しました。
   • 必要に応じて、イベントに関連する準備会議やタスクの期日などもカレンダーに登録し、全体のスケジュール管理に役立てました。

4. 運営メンバー間の情報共有と連携:

   • 参加者リストがTablesアプリでリアルタイムに更新されるため、運営メンバーは常に最新の情報を確認できるようになりました。
   • Nextcloud内のファイル共有機能（例えば、イベント企画書、マニュアルなど）や、必要であればNextcloud Talkなどのコミュニケーションツールも併用し、運営メンバー間の連携を強化しました。

導入効果・メリット

Nextcloudを活用したイベント管理により、この地域団体は以下の効果を得ることができました。

• 作業時間の削減: 参加申し込みの受付、集計、参加者リスト作成にかかる手作業が激減し、イベント担当者の負担が大幅に軽減されました。これまで数時間かかっていた作業が、数十分で完了するようになりました。
• 情報管理の正確性向上: 参加者情報がTablesアプリに一元的に集約され、入力ミスや更新漏れのリスクが低減しました。常に最新で正確な参加者リストに基づき、連絡や準備を進められるようになりました。
• 関係者間の連携強化: 最新の参加者情報や関連ドキュメントがNextcloud上で共有されることで、運営メンバー全員が同じ情報を見て作業できるようになり、連携がスムーズになりました。
• 参加申し込みの利便性向上: オンラインフォームでの申し込みが可能になったことで、参加希望者は都合の良い時間に場所を選ばず申し込めるようになり、申し込みのハードルが下がりました。

導入のポイント・注意点

Nextcloudを地域イベント管理に活用する上で、いくつかのポイントがあります。

• 必要なアプリの有効化: Nextcloudの標準機能に加えて、FormsやTablesといったアプリを「アプリ」メニューから有効化する必要があります。これらは多くの場合、追加費用なしで利用できます。
• フォーム設計と連携設定: どのような参加者情報が必要か、事前に項目をしっかりと設計することが重要です。Formsで作成したフォームのデータをTablesに連携させる設定も忘れずに行います。
• ターゲット読者のITリテラシーへの配慮: 運営メンバーや関係者の中に、Nextcloudの操作に慣れていない方がいる場合は、簡単な説明会を実施したり、操作マニュアルを作成したりするなどのフォローがあると、スムーズな運用に繋がります。
• 外部公開に関する設定: 参加申し込みフォームをインターネット上に公開する場合、セキュリティに関する設定（適切な権限設定など）を確認し、参加者の個人情報保護に十分配慮することが重要です。

まとめ・展望

OSSであるNextcloudは、単なるファイル共有ツールにとどまらず、Forms、Tables、Calendarといった様々なアプリを組み合わせることで、地域イベントの企画から運営までを強力にサポートする統合プラットフォームとなり得ます。手作業に依存していた煩雑なプロセスを効率化し、情報共有を円滑にすることで、イベント運営に関わる方々の負担を軽減し、本来注力すべき地域活動そのものに、より多くの時間とエネルギーを注げるようになります。

今回ご紹介したイベント管理以外にも、Nextcloudの多様なアプリを活用すれば、ボランティア管理、プロジェクトの進捗管理、地域資源のデータベース作成など、様々な地域活動の課題解決に繋がる可能性があります。地域活動の効率化と活性化のために、ぜひOSSの活用を検討されてみてはいかがでしょうか。